なぜ宇宙人は地球に来ない? 読んだよ

なぜ宇宙人は地球に来ない? (PHP新書)

トンデモ科学、疑似科学エセ科学を幅広〜く取り上げた本。知ってる話も知らない話も皮肉混じりの解説で楽しめた。
神様や宗教の話も徹底して超常現象を否定しているが、この辺は分かっちゃいるけどそこまで…という気はしなくもない。まあこういう話もあったりするので難しい問題ではあるのだが。


この話は知らなかった。

pp.25--26
「空飛ぶ円盤」という語も、目撃者のケネス・アーノルドが飛び方を指して「水面に投げた、撥ねるソーサーのよう」と表現したのを、ロサンゼルスタイムズの記者が勘違いして生まれたもので、記事を真に受けて、宇宙人達との接触をでっち挙げたジョージ・アダムスキーは、「アダムスキー型」の円盤を捏造するに至ったのである。

Wikipediaにはそういう話は載ってなかった。


それにしてもトンデモ科学やトンデモ科学ですらないインチキを真じる人はなんでああも信じているのだろうか、真面目に科学するのがアホらしくなってしまいそうだ。
ネタにマジレスと言われるかもしれないが、よくあるツッコミを引用して自分への戒めとしたい。

pp.63--64 念写
何度も何度もイカサマが暴かれたものを信じろという方が無理ではないか。ならばなぜ、拉致被害者等、行方不明になっている人の様子や場所を、その家族のために「念写」してやらないのか。(中略)ゲームのように隠した文字や、歪んだビルの写真や、首がブレて透けている漫画家の写真等、何の役にも立たないではないか。役に立ってこそ「能力」ではないのか。

p.155 サイコロ占い
「突然彼女の師匠が亡くなって、慌てて店を畳まれました」と。名人なら、自分の恩師が死ぬ時期くらいサイコロで知ることはできなかったのか。だいたいでいいから。

p.173--174 血液型
「いいではないか、ただの遊びととらえれば」という人もいるだろう。(中略)しかしそこには、就職・昇進差別、子供達への不当なレッテル貼り、人間関係でのチャンスの限定と、実は弊害の方が桁違いに大きい。
(中略)第一次世界大戦後にヒルシェフェルトという白人主義者の医師が、「A型は優秀、白人はA型が多い。白人は優秀¥」という三段論法で訴えた理屈も、西欧人の優位性を示すために大いに利用されたという。中産階級権威主義的パーソナリティーを、「偉大なるアーリア人の地卯をユダヤの血で汚すな」というスローガンで煽り、「『血で人の質が異なる』という信念が強調され、アウシュビッツにつながる虐殺が行われた。

pp.255--256 予知
「なぜ阪神淡路大震災のような大災害を予知したのなら、警鐘を鳴らし、一人でも多くの人を救わなかったのか」と詰問すると答えに窮してしまい、本人からの説明は為されなかった。宗教家が自分に箔を付けるために、大勢の他人の不幸を材料にして自慢している様を、私には浅ましく思えて仕方がない。

p.288 水
πウォーターの中では肉が六ヶ月間腐らない。(略)それは、πウォータ−には殺菌作用も制菌作用もないが、生体エネルギーがあるから。」なのだという。ならば同じ生き物である菌はなぜ発展を阻まれるのか。(中略)人間にとって都合のいい生命体だけに恩恵があるというのはいかにもご都合主義的だ。

pp.354--355 BSE狂牛病
ある関西の女性劇作家が書いたコラムを読んで、その発想をすこぶる奇妙に感じた。「食に対するつましさや感謝が失われたこの国への天罰のような気もする」などと書かれていた。
何だろうか、「天罰」とは。「つましさや感謝」を忘れた人々は、何も困ってはいない。米国産の安い牛肉を買って食べる人たちだけを、「やや」困らせてどうする。牛肉が高騰したり品薄になって困っている者達が、どういう悪さを働いたというのか。安い牛丼を楽しむ吉野家ファンの、どんな了見がいけないというのか。そもそも、人間に食べられ、あるいは無駄に殺されることもある動物たちこそ災難であるのに、動物たちに「天罰」を下すのはなぜだ。思うに、点がこの国に罰を与えるならば、「米」や「マグロ」や「カツオ」の病気を創りたもうのではないか。なぜ「牛」で、日本に対する「天罰」なのか。阪神大震災が発生したとき、他国のカルト宗教の教祖が、「悪魔の国に天罰が落ちたのだ」と言い放っていたが、それほど的外れなポイントにしか「罰」を落とせない「天」とは何なのか。非常にばかげた物言いである。