塚本・寺田研 10周年記念シンポジウム(前半)

10/11に神戸ファッション美術館で行われた「ウェアラブル・ユビキタスの骨頂」シンポジウム(神戸大学塚本・寺田研究室設立10周年記念研究発表会&講演会)に行ってきた。

リクルータで年1回くらいは大学にも行くけど最近は塚本先生も大変忙しいようでだいたい不在だったので、お会いするのはほぼ5周年以来の5年ぶりだろうか。
400人ほど入るホールは大盛況だった。


塚本先生、寺田先生による研究報告も、招待講演の先生方も非常に面白かったので張り切って紹介しようとメモを取っていたがなかなか記事を書く時間が取れず…ひとまず前半の研究報告のみアップ。後半は近いうちに…!


1. 研究報告

◆統合の骨頂 〜全体プログラミングの神髄
    神戸大学大学院工学研究科 教授 塚本昌彦

ウェアラブル生活13年、ようやく時代がやってきた。
人、もの、場所にコンピュータがつくようになり、全く新しいコンピュータの使い方が広がっていく。これからは創造力の勝負!
表題にもある統合の骨頂:全体プログラミングというのは、実世界にばらまかれた多数のコンピュータを分散/集中制御を組み合わせて全体としてプログラミングすること。
全体プログラミングでは多数のノードを統合的に制御する必要があるが、通常のミクロプログラミングでは個々に入れ替えたりするため、環境変化やトポロジ変化に対し脆弱。全体プログラミングでは問題をシステム内部で解決するため、メカニズムの透明性が低く高度な拡張が困難。
そこで登場するのが自律分散型統合。昆虫や鳥の群行動、蛍の同期など生物からヒントを得たり、セルオートマトン、群知能など、たくさんのコンピュータで何かを行うために全体を一度に制御したりする。
たとえばこんなの。

Glocal Gridというのはたくさんのコンピュータを格子状に繋ぎあわせ、ローカル通信(隣のノード)とグローバル通信(全体)を組み合わせて制御するようなやり方のよう。

今後コンピュータはますます多くのものに内蔵される。衣服、メガネ、指輪、靴などにつけて装着すればウェアラブル、食器、文房具、財布や鍵などの「モノ」につくもの、また部屋や道路、家具などの「場所」につくものはユビキタス。これらを統合して生活を便利にすること、またアートやエンタテインメントコンピューティングで生活を豊かで楽しくすることが今後の方向性。


ちなみにこういうのは嬉しがってやってるわけではなく、統合したいからゆえらしいw

http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20140903_665100.html

Google GlassApple Watchをはじめいよいよウェアラブルが大きく立ち上がってきそうなところ、塚本・寺田研のますますの活躍に期待。


◆詭謀の骨頂 〜人間センシングの神髄
    神戸大学大学院工学研究科 准教授 寺田努

これまでウェアラブルの研究領域としては五感インタフェースやプログラミングモデル・ミドルウェア、またクリティカルな場面でシステムが落ちても最低限の情報を提供するようなディペンダブルシステム(手術中に支援システムが落ちてもバイタルだけは表示し続けるみたいな)など多岐にわたる。

紹介された研究をあちこち引用しようかと思ったけどこれを見ればだいたい分かる!寺田先生による研究100連発@第3回ニコニコ学会βシンポジ​ウム
http://live.nicovideo.jp/watch/lv118857295#02:00:40


またウェアラブルユビキタスでは人間センシングがキー技術となる。
たとえばAirstic DrumYOUPLAYのようなシステムは、スティックが仮想ドラムを叩く瞬間のタイミングやリアルと仮想の判別、アドリブ出演者の動きの認識などが重要で、まさにセンシングが課題となる。


一方これらの技術は重要で、これからも研究の中心にはなっていくけど、ウェアラブルの研究とは生き方をデザインする研究なのではないか?とのこと。
つまり我々はウェアラブルユビキタス技術を使ってどうなりたいのか?ユビキタス環境には自分のどういう情報を知っておいてほしいのか?既存の活動や社会はウェアラブルユビキタスによってどう変化するのか?
そういう研究のためには材料系、心理学、経済学、脳科学など色々な学問領域とのコラボが必要。


バイクレースやライブ、手術など、情報を提示することそのものに価値がある分野がある一方、情報が24時間提示されるようになると、状況に応じて情報提示方法を変更する必要も出てくる。
たとえばこの研究

では、あえて実際と違う情報を提示することで、ユーザの行動を変えてやる。たとえば熱っぽいな〜と思って実際に熱があるときでも平熱を提示することで一日元気な気分で過ごせるようなもの。もちろん本当に体に悪いレベルではいけないのでいい意味で人を騙せるような、人生の参謀として使えるようなシステムが望まれる。

笑顔のログを取ることでより笑顔でいる時間が長くなり、楽しく生きられるような研究を!


色々な分野でのコラボを求めてますとのこと。自分の仕事ではITすら遠い世界の話になってしまっているが、うちの会社でも情報提示なんかはコラボできそうな分野もありそうだ。実際関係会社とコラボしていた時期もあるらしい。やっぱりインタフェース系の仕事がしたいなあ…。